好きだから、別れよう。



力が一気に抜ける感じがした。



あーぁ…


また会えないじゃん。


もー…。





鞄からキティちゃんの団扇を取り出す。



生温い風が俺の顔から首にかけて摺り抜ける。





――仕事終わったら、即メールしよう。





借り物の団扇でちゃっかり涼み、俺は会社に向かった。







今日はいつも以上に気合いを入れて仕事を終わらせた。



電車に乗っている30分程度がやけに長く感じた。



家に着き、誰もいないアパートの部屋に入る。



真っ暗な部屋を、蛍光灯の鈍い明かりが照らす。



俺はスーツから着替えもせず、携帯電話を手に取った。







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