好きだから、別れよう。



「もう送って行った方がいいよね?ご両親心配するでしょ?」



告白が聞けなかったのは残念だけど、高校生の女の子を夜遅く連れ回すわけにはいかない。



当たり前の正義感で言ったつもりだったけど、アヤちゃんは哀しそうな顔をした。



「家に帰っても誰もいないから……」





…これが、アヤちゃんの素顔なんだと思った。





「…うち、お父さんいないんですよ〜!私が小さい頃離婚して…
お母さんは残業したり夜もパートしたりで…帰ってくるの遅いから…」





…これが、強がってるアヤちゃん。



無理に笑って明るく振る舞うのが痛々しかった。







そして……




『父親がいない』と言うアヤちゃんが、


『あの子』の姿と、一瞬重なってしまった――。










.
< 90 / 222 >

この作品をシェア

pagetop