好きだから、別れよう。



アヤは震える声で「お願いします」と言ってくれた。



俺はアヤに、右手の小指を差し出した。



「浮気…すんなよ」



…アイツみたいに。







「しっ、しませんよ〜!マサキさんこそ、浮気しないでくださいよ!」



「しないよ」




しないよ。



できるわけがない。



された側の…哀しみや孤独を知ってる俺には……。











俺はアヤと新たな『約束』をして、アヤを家に送って行った。








ひとりになった車内で、余計なことを思い出す。




俺を裏切った、アイツのこと。



アイツの元に残してきた、あの子のこと。






父親がいないと言ったアヤが、あの子とカブって見える。








…アヤとあの子を重ねるな。



アヤを哀しませることだけは、したくない……。









.
< 94 / 222 >

この作品をシェア

pagetop