好きだから、別れよう。
アヤは震える声で「お願いします」と言ってくれた。
俺はアヤに、右手の小指を差し出した。
「浮気…すんなよ」
…アイツみたいに。
「しっ、しませんよ〜!マサキさんこそ、浮気しないでくださいよ!」
「しないよ」
しないよ。
できるわけがない。
された側の…哀しみや孤独を知ってる俺には……。
俺はアヤと新たな『約束』をして、アヤを家に送って行った。
ひとりになった車内で、余計なことを思い出す。
俺を裏切った、アイツのこと。
アイツの元に残してきた、あの子のこと。
父親がいないと言ったアヤが、あの子とカブって見える。
…アヤとあの子を重ねるな。
アヤを哀しませることだけは、したくない……。
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