好きだから、別れよう。
いつの間にか、俺はある家の前まで車を走らせていた。
電車から見える、青い屋根の家。
この家を遠くからでも見たいがために、マイカー通勤していない俺。
アヤが知ったら、何て言うんだろう。
まだ高校生のアヤには…受け止められないかもしれない。
鳥肌が立った。
さっき手に入れたばかりの愛しい人が、そばを離れていくかもしれない恐怖。
…わかってる。
たとえアヤが俺の過去を拒んでも、
俺は何も言えない。
引き留められない。
過去は…変えられないから……。
でも、ほんの少しだけ…
期待したいんだ。
久しぶりに見付けた恋。
久しぶりに愛した人。
俺は青い屋根の家から、車を走らせた。
アヤの名前を呼びながら。
あの子の姿を…忘れようとしながら――。
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