覆水
 四月五日。雨。
 この日が雨だと、世界が滅んでしまえ、と素直に感じずには居られない。
 ママが、泣いていた。この日だけは、何時まで経っても駄目ね、と、言い、大好き、と抱き締めてくれた。
 ……辛い。苦しい。助けて。
 ……好き。書いちゃった。
 恋、と書いたら、あと、書けなくなったは、太宰治の「斜陽」
 文目もわかたぬ五月闇。それすら届かぬ我がの夕暮れ。気付かず目指すは無間地獄か、はたまた見果てぬ僥倖か、なんて。
 まだ五月ではない。疲れてる。
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