覆水
 六月十日。くもり。
 雨が降りそうだったけど、降らなかったから良かった。
 ミズキ、久し振りに詩を書いたの。
 てんごく。
 てんごくはきれい。
 お空に星が。
 キラキラキラキラ。
 ねこさんも、いぬさんも、うさぎさんも。
 キラキラキラキラ。
 みんなみんな幸せ。
 みんなみんな幸せの国。
 ミズキの出番だよ。



 六月十一日。雨。
 きょうはなし。ミズキがやくそくやぶったから。
 うそ。あめはきらい。



 六月十二日。晴れ。
 友だちが来た。あいちゃん、ゆっこちゃん、あおたんがきた。
 あいちゃん泣いてた。わたしも泣いちゃった。あおたんとけんかした。あおたんきらい。あおたんがけった。あおたんのママに、あおたんはたかれた。いい気味。
 ママがケーキ焼いてくれた。
 仲直りのしるしって言ってた。
 イチゴがおいしかった。
 さようならって言った。
 みんな帰ったら、ママ寝ちゃった。風邪かな。心配。



 六月十三日。晴れ。
 パパが今日は外食しようと言った。
 どこがいいって言ったので、ジョナサンがいいっていった。
 ハンバーグ食べた。
 パパの学校の生徒が、バイトしてたって怒ってた。
 飲みすぎってパパがおこられた。
 パパが、今日は太宰治が死んだ日だってぼやいてた。 
 明日はお引っ越し。
 パパが今日は一緒に寝ようって言った。早く行かないと。
 お酒くさいかな。けど、私がほんとはごめんね。だって、パパにないしょであの本捨てちゃった。もう一緒になれないんだもん。ミズキも分かってくれるよね。
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