魚姫
どうして、目覚めてくれないの?

起きてよ、キリク!

何度も何度もゆさぶったけど、キリクのまぶたはぎゅっと閉じられたまま。

リジーはもっと悪いのか、白い肌がますます色を失っていく。

ああ。

神様!

もし本当にいらっしゃるのなら、どうか彼らを助けてください。

キリクは、あたしの大事な人です。

リジーは、彼の・・・彼の大事な人だから・・・っ。

そのためなら、あたしはどうなってもかまいません。

一度は失いかけた命、だもの。

そうだもの。

どうか、どうか、彼らを助けて!!

『・・・哀れなイルカ。何故その人間に固執するのか、理解できないわ・・・』

ぱちんぱちんと音を立てて、無数の水泡がぐるりと辺りを囲った。

あたしはびくんと背びれをしならせて、彼らを守るように身構えた。

恐怖が、海の底の魚影から伝わってくる。

・・・・怖い!

「あなた、何者なの?」

水泡は嘲笑うように連なって弾けた。




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