Secret love.
「…おはよ、笹川」

「あ…うん、おはよ」

顔が見れない。
今どんな顔をしているのか、気になる。
さっきからずっと祐介は居たんだけどわざと気づいてないふりをしていた。

「お前が振り向いてくれるまで俺は待つから」

「……」

キスの感触が忘れられない。
熱っぽかった祐介の唇。振りほどけなかった力強い腕。
今やっと祐介が男だということを思い知らされる。

どうしても私は祐真しか見えない。
そう思いながら私は席に腰を落とした。

テストは終わったけど次の時間も自習だっていうから私は眠った。


そして



夢を見た。

すっごい昔の夢を。

―――あれは、ある雨の降りしきる日だった。
いつも変わらず私の世話をするお父さん。しかし様子がおかしかった。



『どうしたの?』

と問い掛けても『ううん、大丈夫だよ』ってしか言ってくれなかった。

それからお父さんは毎日食べたものを戻したりした。たまには引きつけを起こしたり…。

死んでしまうかと思った。ある日にお母さんが死体で見つかったって聞いて、お父さんは抜け殻のようになってしまった。
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