先生
だめだ。泣いちゃう。
心がチクチク痛む。
こんな感覚は初めてだった。
「あ、あたし、用事思い出したっ!ごめん、先行くね」
彩花は急いで着替えて部室を飛び出した。
でも、そんな彼女の目に飛び込んできたのは、一番見たくない光景だった。


「先生ー、今週あと何回体育あるー?」
美羽の言葉に、先生は指を折って、あと何回体育があるか数える。
「あと3回もあるで」
先生がかわいいあの子に笑顔を向ける。


やだ。
その笑顔をあたしに向けてよ。


「あたし体育ほんま大好きっ。先生の授業楽しいもんっ。」
「ありがとう。」

やめて。

あたしのが先生の授業好きやもん

大好きやもん。





視界が滲んでいく


先生と美羽がぼやける


でも


彩花は自分の気持ちは悲しいほどはっきり見えた。



先生


大好き大好き大好き



あたしはただの生徒で


美羽は特別なの?



先生、、、



あたしは特別じゃなくてもいいから



だから



美羽も特別にしないで



あたしの目の前で







特別をつくらないで






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