先生

彩花は一歩二歩と後ずさると、先生たちに背中を向けて走った。
後ろから、二人の楽しそうな声が聞こえる。


苦しい

痛い

苦しい

痛い

体の奥の方が、ズキズキと音をたてた。


家に着くと、彩花はベッドに倒れこんだ。

本当に美羽と先生は付き合ってるのかな、、、

彩花は、一階にいるお母さんに気付かれないように、枕に顔を埋めて声を押し殺して泣いた。
そんな時、携帯が慰めるように明るい音楽を鳴らした。ゆっくりと携帯を開く。
画面には、友達の“亜子”の二文字。彩花は目の涙を拭って、亜子からのメールを開いた。
『今日帰りに体育館前いたやろ？なんか様子おかしかったけど、、、どしたー？』
亜子、見てたんだ。
亜子に話してみようかな。
でも、、、

亜子は西本先生のことをあまりよく思っていなかった。それに、美羽が西本先生を好きだということにも引いていたし。
あたしが西本先生を好きだって知ったら、どう思うんだろ、、、。

亜子は彩花にとって一番大切で信頼していて大好きな親友。
なのに、、、彼女は先生を好きなことが言えなかった。
親友だからこそ言えたはずなのに。




「亜子ごめんね。」
小さくつぶやいて、あたしは『なんともないよ〜』と明るいメールを返した。