先生
彩花が先生を異性として好きになったのは、部活引退後だった。













夏休み明け、久しぶりの学校。
教室からは騒がしい声。
彩花は早くみんなに会いたくて、足早に教室へ向かっていた。
その時、曲がり角で誰かにぶつかった。
「いたっ」
「いって」
彩花は顔をおさえて、ぶつかった人を見た。
ぶつかったのは西本先生だった。
「すいませんっ」
二学期初日から先生とぶつかってしまうなんて。
なんだか恥ずかしくて、彩花はうつむいて謝った。
「いや、俺こそごめん。大丈夫か?」
先生は心配そうに彼女を見た。
「うん」
彩花は顔をあげた。
「ん?彩花、、、髪切った?」
西本先生は彩花の顔から頭に目をやった。
彩花はなんだか恥ずかしくて、また少し俯いて返事をした。
「あ、うん。」

「へー、かわいいやん。似合っとるよ」

この瞬間だった。
なぜか彩花は先生の言葉と笑顔で、先生を異性として好きになった。
他の人からみれば“単純”の一言かもしれない。でも、その日から彩花の恋は始まった。

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