先生





車の音がする度に、心臓が早くなる。気持ちが一気に舞い上がる。
でも、先生じゃないとわかると、ため息をついて肩を落とす。
そんなことを繰り返して何度めか、やっと先生の車が彩花の前に止まった。
すごいドキドキして、先生が目の前にいることに、思わずにやけてしまいそうになる。
そんな彩花を焦らすように、車のウィンドウはゆっくり空いた。
先生の顔が彩花に笑いかける。
「おはよう彩花。後ろ乗って」
そう言って先生は後ろの座席を指差す。
彩花はチラリと助手席に目をやった。
体の奥の方が、ギュッと痛くなった。


やっぱりあたしは後ろなんや、、、。


なんて、バカみたいな不満を、心の中でこぼしてみた。

「おねがいしまーす」
彩花は拗ねた気持ちを押さえながら、後部座席に乗り込んだ。

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