先生
練習が終わると、先生に呼び出された。

「彩花、ちょっと」

精一杯平然を装う。でも、心臓はバクバクで、先生の顔が見れない。

なんだろ。

「なんですか?」
なんとか先生の顔を見てみたけど、すぐ目をそらしてしまった。

「いや、今日はありがとうな。彩花が来てくれて助かったわ」
先生はそう言って彩花に笑いかけた。
そして、その笑顔で一瞬頭の中が真っ白になる彩花。
彼女は慌てて返事をした。「そんな、あたしそんなにっていうか、全然たいしたことしてへんしっっ。手伝いに来たのに、全然役たたへんしっ、、、」
自分の不甲斐なさに、彩花は俯いた。
バレー部の役に、先生の役に立ちたいと思うのに、いつも何も出来ない。挙げ句の果てには足をひっぱることだってある。
そんな自分が、先生の役に立っているわけがない。


「んなことない。お前が来てくれて俺、すっげぇ助かった。」
先生の声のトーンが、真剣になった。
彩花の緊張はさらに増す。
「彩花自身ではわからへんと思うけど、今日お前が来てくれて、バレー部内の雰囲気がすごい変わったんや」

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