先生
「いってきまーす」
母親の車を降りると、冷たい風が頬に突き刺さるように吹いた。
彩花は100mぐらい先にある校舎を見つめた。
雪が解けはじめて、雫がキラキラ光っている。

とてつもなく長く感じた冬休みもやっと終わり、始まった三学期。

やっと先生に会える!

いつものように彩花は校舎までの坂、100mをゆっくり時間をかけて歩く。
理由は先生が横を車で通っていくかもしれないから。もし通ったら、そこからは調節して少し早歩き。
車をとめて学校に入る先生と玄関で会えるかもしれないから。


でも、彩花の願いも虚しく、先生が横を通っていく事はなく、あっという間に玄関にたどり着いてしまった。
玄関の前で、何度も坂を振り返る。
でも、車がくる気配はない。
ため息をつくと、彩花はノロノロと靴をスリッパにはきかえた。

朝イチで先生に会いたかったな。

肩を落としながら、階段をあがろうと一段めに足をかけた時だった。

「おー!あけましておめでとう。」
どこからか先生の声が聞こえてきた。
彩花は慌てて玄関に駆け戻る。
あたりをキョロキョロ見回すと、玄関の窓の向こうに先生はいた。先生の声と、少しだけ頭が見えた。
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