先生
みんなが体育館から出ると、彩花は先生に声をかけた。

ドクンドクン
ドクンドクン

「先生っ」

ドクンドクン
ドクンドクン

「はい。何??」

先生は不思議そうに彩花に少し近づいた。

「どした?」

いつもとなんら変わりない先生。

そう。今あたしが手に持っているのはあくまで理チョコ。
そして、先生もいつもと変わらない。
別に告白するわけじゃない。

自分に言い聞かせ、なるべくいつもと変わらず、生徒を演じて、平静を装って。

彩花はチョコレートを前に出した。

「はいっ!先生あげるっ。バレンタインチョコ!」

ついに、渡した。

「おぉー!ありがとう!」
そう言うと、先生はいつもの大好きな笑顔で彩花の手からチョコレートを受け取った。

もう、先生の手のなかにチョコレートはある。


ドクンドクン



ドクンドクン



ドクンドクン



「あんまり美味しくないかもしれやんけど、、、」

「いやいやいや、ほんまありがとうな!学校ではたべれやんから、家で食うわ!」

先生はそう言って彩花に笑顔を向けた。
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