パパとわたし
何よ、見せてくれても良いじゃない。

だーめ。これはパパのだもん。パパに一番に見せるんだもん。

はいはい、そうなさい。
まったく頑固なんだから。
でもその代わり私の分も作ってよね。
本当、パパには嫉妬しちゃうわ。

衣央さんは少し頬を膨らませてぼやいた。
由依はすかさず衣央さんの真似をする。
似てな~い、とくすくす笑いながら言われて、由依も笑ってしまった。

由依達がこうしている間にパパが起きてきた。


いつ見てもパパの完璧さには舌をまく。何というか、とにかくスマートだ。だらしない恰好なんかしてたことがない。いつだってパパはパパなのだ。
由依はパパの寝ぼけた顔をみたことがないし、ねぐせがあるのかどうかも分からない。
酔っ払ってだらしなくなった姿も知らない。そもそもお酒を飲み過ぎたりするんだろうか。
とにかく紳士なのだ。

おはよう、それと誕生日おめでとう。

猫にするみたいに手の甲で由依の頬をなでる。ちょっと照れくさくてすぐったいけど、由依はこうされるのが一番好きだ。小さな猫は甘えてのどを鳴らす。

忘れていた。
パパに持っている皿を差し出す。少し緊張した。

今日の朝食は由依が作ったんだよ。はいこれ、パパの分。

喜んでくれるかな。
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