パパとわたし
衣央さんはわが家の家政婦で、由依のベビーシッターだ。由依のママは、由依が生まれてすぐ亡くなった。
衣央さんはママの友達で、ママのことは何でも知っている。いつも思い出を話してくれるから、まるでママが見守ってくれているみたいに感じる。
ママと会えないのはさびしい時もあるけど、衣央さんがいるから大丈夫。
あとパパもね。

パパは今日は元気がないみたい。せっかく由依が手渡しであげたコーヒーを、飲まずにじっと見つめている。冷めたらおいしくないのに。
由依はコーヒーを飲んだことないけど、冷めたらおいしくないらしい。脳細胞が死ぬから飲んじゃだめだって。家庭教師に言われた。本当かな?

パパは困ってるのか、笑ってるのかよくわからない表情で、相変わらずコップとにらめっこしている。

コーヒーおいしくなかったの、って聞いたら、おいしいよ、うすさも丁度いいよって返ってきた。でも、何かいつもと違う。
パパは優しくて、いつでもにこにこしててくれないと。
でないと由依は安心してわがままが言えない。
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