【短】KARA KIRA
「化学」
「また?」
智広は呆れた声を出した。
海砂は、真白な化学のワークを見つめて、口を尖らせる。
「だってはやしー先生、真面目すぎるんだもん」
化学から宿題として出された課題は、正直どの科目より多い。
英語よりも数学よりも多いのだから、生徒はみな辟易していた。
どんなに嫌がったところで、提出日は待ってくれないのだが。
長いようであっという間の夏休みは、海砂のワークは白いまま終わりを告げただろう。
懇切丁寧に教えてくれる智広がいなければ。
「真面目というか……」
はやしー、と呼ばれた化学教師は、こと宿題に関しては『鬼』と評判だった。
そのくせ授業は大半が親父ギャグで占められている。
海砂はその授業のほうがいたく気に入って、教師も慕っているのだが、生憎と成績は好みと反比例するかのように、化学は苦手。