【短】KARA KIRA
「大体さー、ありえないよ。だって元素記号からわかんないんだもん」
「自慢げに言うことじゃないでしょ」
ぴしゃり、と叱られて海砂は顔をしかめる。
もう一度窓の外に視線を戻して、グラスを振った。
汗をかいたグラスは、手の中で少し滑る。
カラカラ。
小さくなった氷が音を立てた。
生ぬるくなったジュースは、口に含むと、案の定あまりおいしくない。
薄いオレンジジュースはよろしくない、と海砂は脳内メモリーに書き付けた。
どうせすぐに忘れるのだけれど。
もうほとんど中身のなくなったグラスからストローを取り出し、テーブルの端にあるガラスの灰皿に置いた。