【短】KARA KIRA
「あ」
ガラス製のそれは床に叩きつけられ、あっけなく壊れてしまった。
粉々になった破片が、太陽の光を受けてキラキラと輝く。
綺麗だ、と思った。
壊れちゃったけど、壊れたほうが、綺麗。
盛大な音を聞きつけた店員が慌てて駆け寄ってきた。
「すいません」
すっかり狼狽した様子で立ち上がった智広は、しきりに頭を下げる。
弁償する、と言い出しても断られ、破片を拾おうとしては咎められ、どうにも気まずそうに腰を下ろした。
キラキラとしていたガラスの灰皿は、あっという間に箒で集められ、なくなってしまった。
何事もなかったように、割れる前の状態に戻る。
灰皿を必要としない二人のテーブルでは、最初からあんなアクシデントなど、なかったようにすら感じられる。