【短】KARA KIRA
「さて、と。続きやりますか」
んー、と海砂が伸びをする。
放り投げっぱなしだったペンを握った。
なんだかすっきりと、やる気が出た気がする。
「海砂、今日そのセリフ三回目」
「いいのいいの。終わるまで、付き合ってくれるんでしょう?」
にこり、と笑えば智広は深くため息を吐いた。
教科書を海砂のほうにひっくり返し、ペンの先で図を示す。
「まず、イオンと電子はいい?」
「それは覚えた」
「じゃあ、そのイオンが電子を放出すると陽イオン、つまりプラスになるんだ。それで、逆に受け取ったイオンが……」
ようやく走り始めたペンを、ぬるくなってもう汗をかかなくなったグラスが見つめていた。
からり、と溶けた氷が音を立てる。
太陽の光を反射して、割れた灰皿の代わりに輝いていたことに、もう二人は気づかなかった。