sky
「…ひとつ、聞きたいことがある」
もう用は済んだと思ったのか、机の上の書類に目を通しているスカーレットに、カインはそう言った。
「何だ?今後の依頼についてか」
スカーレットは書類から目を離さないまま、カインに問い返す。
「いや、そうじゃない」
その返答に、スカーレットは顔を上げた。
「珍しいな。仕事以外のことでお前から俺に質問なんて」
そう言って、内容を催促するように少しだけ身を乗り出した。
「…羽根の生えた人間を、見たことあるか」
「羽根?」
カインの言葉にピンとこないらしく、首をかしげる。
「…ないならいいんだ」
そうとだけ言って踵を返し、去ろうとするカインの背にスカーレットは静かに言った。
「…聞いたことがある。遥か古の時代に存在していたという…翼を持つ、有翼種の話を」
「………」
「だが今はもう絶滅したと言われている伝説の空の民だ。…どうした?突然」
「…いや、何でもない。少し気になっただけだ」
そう言いながら、カインは部屋をあとにした。