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紅の男
――次の日、カインはユグドラシルのビルのある一室にいた。
部屋の中にはいくつかの黒塗りのテーブルと、同じく黒色でできたイスがあった。
小さな会議室のようにも見える。
カインの座る向かいにはメリッサがいて、何やら書類を整理していた。
「話って……昨日の件か」
カインの唐突な問いに、メリッサはトントンと書類をまとめながら頷いた。
「うん。あれからもう一度調べたんだ」
「……紅い、って何だ」
昨日途中で終わったメリッサの言葉の続きを問う。
「とりあえず、一通り話すよ」
「ああ」
「まず、あの屋敷の主は闇の商売を生業にしていたんだ。麻薬とか人身売買とか」
「……」
くだらない。
「最初は大したものじゃなかったんだけど、ここ最近で急に力を伸ばし始めた。そしてこの組織の耳に入った」
だから、消した。
「……組織の脅威になるものは早々に芽を摘む。これがここのやり方だからなー」
そう言ってメリッサは苦笑した。
「結果的にしていることは同じなのに、ね……」
麻薬や人身売買など安っぽいことはしないが、結局自分たちが赦されないことをしていることに変わりはないと、彼は言った。