sky
玄関に向かうと、思ったとおりそこにはカインがいた。
「おかえりなさい」
わたしはそう言って彼を出迎える。
「……」
今日もカインは何も返してくれないけど、不思議と哀しくはなかった。
だって、彼は無表情でもその瞳はやさしいから。
それだけで十分だと思った。
ぼんやりとそう考えていた時、わたしはカインのスーツや白いシャツに付着している、赤黒い染みに気が付いた。
それは、多分血痕。
「っ、どこかけがしたの?」
分かっていて、わたしは聞いた。
カインはわたしから視線を逸らして横を通り過ぎる。
「……俺の血じゃない」
誰かの命を刈った、刀を携えて。