ホワイトデーの復讐
そんなに顔が緩んでたのか。
「幸せそうだな」
そう言って、彰はフッと笑った。
その笑顔が妙に色っぽくて。
『綺麗……』
思わず呟いてしまった。
「は?」
男の人に使う言葉じゃないってことはわかってるんだけど…
他の表現方法がわかんなくて。その言葉が一番しっくりくるくらい、絵になってたんだ。
あー。いつの間にこんなにかっこよくなってたんだろ……
っていうか。
『そ、そんな見つめないでくれるかな…』
顔が熱い。これは温かいココアを飲んだせいなんかじゃない。
その理由に気づいたのはつい最近だったけど……
あたしこそ、いつの間に彰が……
「意味わかんね。……一口、ちょうだい?」
『え?……あ、ちょっ』
あたしがわたわたしている間に、ひょいっとマグカップを奪う。
そのまま、口に運んだ。
間接キス、ってワケでもないんだけど。それだけで、あたしの心臓は暴れだす。
「甘い」
そう呟いて、あたしにマグカップを返す。
「んな甘ったるいもん、よく飲めんな」
あ、あの時と反応一緒。
かっこよくなっても、彰は彰だ。あたしの知ってる彰だ。
それが、無性に嬉しかった。
『えへへ』
「何笑ってんだよ。変な紗也」