ホワイトデーの復讐
「……俺を騙せるとでも?」
『え?……わっ』
………最近、このパターン多いよね。
目の前にはムカつくくらい整った顔。その向こうには天井。
背中にはフローリングの冷たい感触。
あたし、押し倒され率高いや。
「なんで言わねぇんだよ」
『そんなこと言ったって……』
「ムカつく」
『え?……っ!』
唇に、柔らかい感触。それがキスだと気づくのに、3秒かかった。
『ちょ、あき……』
「俺じゃ頼りないって?年下だから?」
『………彰?』
初めて見た、彰の───辛そうな顔。
「辛いのに笑ってるお前見てるの、しんどい」
『え…?』
「その理由を教えてくれないと、もっとしんどい。ってか辛い」
『彰……』
ヤバい、あたし泣きそう…
『変な誤解しないで…あたしなりのけじめだよ、この件で彰に頼らないっていうのは。だからそんな顔しないで…?』
スッと彰の頬に手を当てると、袖口で口を隠して、少しだけ頬を染めた。
袖口で口を隠すのは、小さい頃から、彰が照れたときにやる癖。
「わりぃ、俺なんか……カッコ悪」
そう言って、あたしの上から退くと、腕を引っ張って起こしてくれた。
いつもは謝ったり、起こしてくれたりしないのに。
『そんなことないよ。心配してくれてありがとう』
「……お前、ふわっふわしてっから、いつかどっか行きそうで怖いんだよ」
珍しく心情を話してくれた彰。
『大丈夫。あたしはここに……ずっと彰の隣にいるよ。どこにも行かないから』
そう言って笑いかけると、
「……それ、天然で言えちゃうんだもんな」
と、苦笑いをした。