ホワイトデーの復讐
「…想いは伝えるつもり。あたし、家計が苦しくてキャバクラで働いてるんだけど……彼に会うまで、純粋な気持ちを…ピュアな恋愛を忘れてたんだ」
純粋な気持ち…ピュアな恋愛……
「だから、この想いは大切にしたい……って!あんた何泣いてんだよ」
困った顔をする溝口さん。頬に手を触れると、確かに濡れていた。
『あ…なんか、感動しちゃって。あたしより年下なのにっ…』
ゴシゴシと目を擦ると、
「ん。」
彼女がハンカチを差し出してくれた。
『い、いいの?』
「使えば?なんかあたしが泣かしてるみたいだし」
ぶっきらぼうで、不器用だけど。彼女は優しくていい子なんだ。
「なんか、あんたに話してちょっと楽になったかも」
そう言って、フワリと微笑んだ。
『溝口さん、ヒマワリみたいに笑うね』
「…恥ずかしいんだけど」
ちょっと照れる溝口さんも、女の子って感じで可愛い。
「すみれでいいよ」
『すみれちゃん!』
「あんた、名前は?」
『紗也だよ』
「覚えとくよ。ここは紗也の奢りね?」
『年上を敬いなさいよー。……でもまぁ、あたしが連れ込んだんだし。お姉さん、奢っちゃう!』
「やった♪すみませーん!モンブランパフェとチョコバナナクレープ追加で!」
『…殴るよ?』
あぁ、あたしとしたことが。
宣戦布告するつもりが、恋敵と仲良くなっちゃったよ。
………どうしよう。
ま、なんとかなるか!
この時の、楽観的思考のせいで…
2日後に…決戦のホワイトデーに。とんでもない結末を見るはめになるなんて、想像すらしていなかった。