ホワイトデーの復讐
『え、拓……たーくんっ!?』
「なぁに?紗也ちゃん?」
『え、あっ、なんでもなっ……たーくん!?』
「どーしたの?」
ニコリと微笑む、我が癒しの天使、たーくん。
彼、5歳。彼女、15歳。
フリーズするあたしを見て、ケラケラ笑う彰。
今はそんなのに構っている暇はない。
ちょっと頭を整理しなくちゃ、ついてけない。
まず、すみれちゃんが好きなのは……たーくん。
確かに、純粋な気持ちでピュアな恋、だよね。
だから、一番近くにいる彰…放課後に、一緒にサッカーしたりして遊んでる彰が羨ましくて、チョコに毒を…下剤を盛ったんだ。
『え?じゃあ…毒チョコ配りまくってたのは?』
満くんだって、被害者じゃん。
「あぁ、下剤余ったから。使い道ないし」
『……あはは』
可哀想……
でも……。フェンス越しに見ていたのは、彰じゃなくてたーくんで。
叶わない可能性の高い恋っていうのは年の差、仲良くしている女っていうのは近所に住んでて、なおかつ、おっきくなったら、ぼくのお嫁さんになってね!と、小さい子特有のプロポーズをされたあたしのことだったんだ。
頭の中で、バラバラだったパズルのピースが、固まり始めた。
たった一つ、あたしにとって一番大切なところを除いては。
「スッキリした?」
たーくんの癒しのスマイルを前に、デレデレのナンバーワンキャバ嬢。
ほんと、恋って予測不能。
『あ、うん…ただ……』
「ただ?」
『…結局、彰のずっと好きだった人って誰なの?』
一番知りたいのに、最後まで話題に出なかった。
「「「「………。」」」」
『え?何?なんか変なこと言った?』
急に空気が固まった。
彰もすみれちゃんも満くんも、たーくんすら固まっていた。
そして…
「ドンマイ」
「紗也のそう言うところも魅力なんでしょ?」
「あっくん、頑張れ!」
謎のセリフを彰に残して、3人は出ていってしまった。