ホワイトデーの復讐
急に静寂に満ちるリビング。
………空気が痛い。
オーラでわかるの。ねぇ、彰?
『お、怒ってる?』
目の前に、ものすごく不機嫌な顔の彰。
ここまでの不機嫌顔は、そうそう拝めないよ。
「お前さぁ…ほんとなんなの?」
『え?』
「お前の中で俺って、軽い男?」
『う、ううん?』
彰が一途ってことは、ほんとによく知ってる。昔から、どんなに可愛い女の子も、美人な女の子も、スタイル抜群な女の子も、彰に告白して瞬殺されたのを見てきた。
「じゃあ俺が意味もなくあんなこと、すると思う?」
『あんなこと?』
どんなこと?
「こっち」
急に立ち上がったかと思うと、あたしの手を引き、リビングを出た。
ついたのは……彰の部屋。
『ちょ、彰……きゃあっ!?』
ドンッと突き飛ばされて、あたしは倒れ込んだ。
痛くない代わりに、背中にふわふわした感触。
ベッドの、上?
『ちょっとっ……』
何するのよ!
そう言おうと動いた唇に、彰の唇が触れた。
『っ……』
「こういうこと」
唇を離した彰が、そう呟いた。
「1ヶ月前も言ったよな?ちょっとは自分のことかもって考えろ、って。てっきり伝わったと思ってたけど……腹痛いだのなんのって、騒いでたから忘れた?」
自分のことかもって……自惚れていいってこと?
『あ、彰の……ずっと好きだった人って、あたし?』
「違う」
えぇ!?
「好きだった、じゃなくて、ずっと好きな人。過去形じゃなくて、現在進行形」
間近で見た、彰のニコッと笑った顔は、あたしの顔を真っ赤にするのに十分すぎるほどカッコよくて。
そ、その笑顔は反則だよぉ…
1人、悶絶するハメになった。
「で?」
………で?