僕らのミライレンサ
自分の叫んだ声がスーッと白い空間に消えていく。自称天使はまた微笑み”純粋ボーイでしたね、記憶はそのままで転生いたしましょう~”と言ってきた。


”それでは、始めましょうか~”


自称天使がくるりと腕を振り上げると、俺の足元が金色に光だし円ができた。心なしか足の先からじんわりと温かくなってくる。


”アナタにたくさんの幸せが訪れますように~”


次第に金色の光に包まれ、下から風が吹いてくる。
元の俺は即死で死んでしまったからもういないけど、また別の男として生まれ変わりアイツに会いに行けばいい。きっと季恵(きえ)ならすぐに理解してくれるはずだ。
長年隣で生きてきた自分には、簡単に口に出して言えるほど自信があった。真っ先に会いに行って、それで___


”赤ちゃん生活をエンジョイしてくださいね~”

『___…え、ちょっと待て!赤ちゃ、』


最期に見えたのは、ひらひらと手を振る自称天使。真っ白な空間は一面光で覆われ眩しすぎて目を開けていられなくなった。
俺は、転生というものをよく考えていなかったらしい。
光で溢れていた状況が一変、生温かくとても窮屈で身動きができない。息苦しく、押しつぶされてしまうくらい身体に圧力がかかってくる。
この状況が、なんとなく理解できる。


春瀬(はるせ)さん!がんばってください!あとちょっとですよ!」


頭の締め付けが取れ、幕が張ったような耳に詰まる音。全身が解放され、やっとの思いで息を吸い込む。


「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」

「ふんぎゃぁぁぁぁ!」(俺ってバカだ、転生ってこういうことだよなぁぁぁ!)


佐藤巧(さとうたくみ)、改め春瀬旬(はるせしゅん)。恋人に会うため、俺はもう一度この世に生を受けた。
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