ひまわり
汐莉の涙で潤む目を見ることができなくて、僕は俯くように下を向いた。
「……た…ける?」
今にも消えそうな汐莉の声を聞きながら
静かに流れ落ちた涙は、温かく砂浜を濡らした。
それは雨のように見えた。
なぜか心臓のあたりがズキズキと痛む。
どうしてだろう……?
そっか、これは心が泣いてるんだ。
僕の見つめる砂浜にぽとぽとと小さな斑点が落ちる。
薄暗い空には厚い雲がかかっていて
その隙間には少しだけ光が見えた。
空が泣いた。
僕と汐莉のように、静かに音を立てずに
ポツリポツリと涙を零した。
「…ごめん、汐莉。
俺は汐莉を守ってはやれない……」
そう独り言のように呟いて、汐莉を軽く抱きしめた。
その体はびっくりするくらい細くて
思わず涙を流した。
そんな弱々しい僕に縋り付くように君は
「……離れないで…」
って細く細く叫んだ。
しがみつく汐莉を離して僕はキスをした
切なくてしょっぱくて
涙の味がした。
「………ごめんな」
汐莉のサラサラな髪の毛を撫でてから
僕は立ち上がった。
「……健…」
そう叫ぶ汐莉にくるりと背中を向けて
逃げるように僕は走った。
何度も何度も、汐莉の笑顔と泣き顔が浮かんで
僕はその度に立ち止まった。
こんなの、ただ逃げてるだけだって………
そんなのわかってた。
とっくの間に知ってた。
だけど、汐莉を見ると涙が止まらなくて
心がズキズキ痛くて。
どうしようもない、やり場のない思いが
僕の心を蝕んでいくんだ……。
ごめんな、汐莉。
こんな弱い僕で……
守ってやれなくて。
傍にいてやれなくて。
本当にごめんな……
「……健っ…!!」
聞き覚えのある声と共に僕の体を後ろから何かが抱きしめた。
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