ひまわり



アイツは立ち止まってこう言った。




「…聖斗(マサト)。おまえは?」

「あたしは汐莉!」






………聖斗。

心の中で反復する。



どこかで聞いたことがあるような……
うーんと……何だっけ?







「…おい」

すごく間近で声が聞こえて、あたしはビックリして飛び上がった。




「……な、な…に?」

驚きすぎて声は上ずるし、心臓はバクバクいってるし、あたし死にそう……。




「……とりあえず落ち着け」

「う、うん」



深呼吸をしながら目を開けると、聖斗があたしの前に立っていた。

それはそれでビックリするはずなのに、あたしは大して驚かなかった。





「お前さ、神崎汐莉だろ?」

「は?」






……いやいや。

突然、知り合ったばかりで名前教えてないのに、フルネームで言われたら誰だって驚くでしょ……。





「俺のこと、覚えてない?」

「……うん」



残念ながら、ね。





「神崎聖斗。お前の双子の兄ちゃん」

「は?」


ごめん。二度目の“は?”出ちゃった。



「だから~……」

聖斗はもう半分ぼやいている状態で、あたしは心の中で謝る。




「ほら、小さい頃に親離婚したろ?あれ」





あたしの頭の中には、一つの映像が浮かんだ。


小さい頃のあたしと、お父さんが見える。





“お父さん!この子だぁれ?”

“聖斗だよ。お前のお兄ちゃん”

“まさとぉ?”







………あ。そうだ…


あたしが3才の時、親が離婚した。

あたしはお父さんに、聖斗はお母さんに引き取られた。





小さい頃は、健も一緒に3人で遊んでいた。

もしかしたら……






あたしは聖斗にありがとう、とだけ言い残して走り出した。



聖斗が、
「もうさよならだよ……」

と呟いたことも知らずに。















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