ひまわり
不意にあたしの右手と健の左手が触れる。
その手には指輪がキラキラ光っていて、少しだけ恥ずかしくなった。
「…汐莉」
その言葉が合図。
健の唇があたしのそれを優しく包んだ。
あの遊園地に行った日から健には会えていなかったから、このキスは新鮮で優しかった。
二人とも言葉で表すことが苦手だから、こうやって唇を重ねることで感情も重ねることができる。
いつの間にか、あたしは健に溺れてた。
「…汐莉、明日退院だっけ?」
長い沈黙のあとに健がポツリ言う。
その返事の代わりに頷いて、健に寄り掛かるようにして肩に頭を乗せた。
あんなに先生たちには元気を装ってたけど、本当は怖かった。
どうしようもなく怖かったんだ。
きっと健が今そばにいなかったら、あたしは怖くて怖くて震えてただろう。
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