ひまわり




不意にあたしの右手と健の左手が触れる。

その手には指輪がキラキラ光っていて、少しだけ恥ずかしくなった。


「…汐莉」

その言葉が合図。




健の唇があたしのそれを優しく包んだ。

あの遊園地に行った日から健には会えていなかったから、このキスは新鮮で優しかった。



二人とも言葉で表すことが苦手だから、こうやって唇を重ねることで感情も重ねることができる。


いつの間にか、あたしは健に溺れてた。







「…汐莉、明日退院だっけ?」


長い沈黙のあとに健がポツリ言う。
その返事の代わりに頷いて、健に寄り掛かるようにして肩に頭を乗せた。




あんなに先生たちには元気を装ってたけど、本当は怖かった。

どうしようもなく怖かったんだ。


きっと健が今そばにいなかったら、あたしは怖くて怖くて震えてただろう。















< 186 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop