ひまわり
普段より回り道をして病室に辿り着き、ドアに手をかける。
「……なのね…」
「…………!!…」
中からは誰かが言い争う声がかすかに聞こえてきた。
―…嫌な予感がする。
―聞くな、聞いちゃダメだ。
―今すぐそこから離れろ。
心がそう叫んでいる。
だけど足が竦んで、動く気配がない。
嫌なほどに耳に聞こえて来るのは、両親の泣き声まじりな会話だった。
「…どうして?どうして汐莉なの?!」
初めて聞いた母の涙。
「……落ち着け、眞弓」
初めて知った冷静ではない父の姿。
「落ち着けるわけ…無いでしょう?!」
「……………」
「……信じられないわ」
今まで何度見たことだろう。
母が今にも発狂しそうになっているところなんて……。
父が必死で涙を堪えようとしている姿なんて……。
全部初めて見た。
「汐莉が…あと1年生きられるかどうかなんて……」
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