ひまわり



あたしは物音をたてないように注意しながら、もと来た道を戻る。

さっきまであんなに色鮮やかに輝いていた景色が、今では色褪せて見えた。





楽しそうに顔を突き合わせて話すおばさん。

買ってもらったお菓子を喜んで食べる男の子。





羨ましい。

先の明るい未来がある人たちが無性に羨ましかった。




青一色の空を滑るように流れる雲。

夏真っ只中を示す太陽。

その中を気持ち良さそうに飛ぶ鳥たち。




綺麗すぎるんだ。

綺麗すぎるからこそ、いっそのこと全てこの時間の中に止まっていればいいのに。






どう頑張ってみても、あたしの頬を伝う雫にもう透明さなんて宿らない。


あたし……死んじゃうのかな。

まだ、死にたくないよ…





声も出なかった。
ただ、ただ……
冷たい雫が頬を伝うだけ。

苦しくもない。

ただ、ただ……
空虚感があたしを襲うだけ。




それだけのこと。















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