ひまわり
ふと窓の外に目をやると、健が入口に向かってくるのが見えた。
あたしは必死で唇を噛んで堪え頬に伝う涙を拭った。
健にだけは心配…かけたくなかったから。
健には涙、見られたくなかったから。
健が近づいて来る足音が聞こえる。
やがてあたしの側まで来ると、その音はやみ…
「………あれ、汐莉?」
愛しい声であたしを呼んだ。
「…あ、健……どうしたの?」
「汐莉こそ…病室にいるんだと思った」
「あっ…何か景色見たくって」
「……そっか」
なるべく平然を装ったつもり。
健も気づいてないようで少し安心した。
「退院…おめでと」
「…フフ、ありがとう」
そう言って二人で小さく笑った。
でもやっぱりあたしの心は、何処かぎこちなくて胸が苦しかった。
健の真っ直ぐな瞳も、今日はなんだか見れなくて……正直、辛い。
どうしてだろう……?
なんでだろう……?
そうか、あたしが健に嘘ついてるからだね。
だけど健には言えないから……。
今はまだ、内緒。
「…汐莉、健くん」
あたしたちの間に流れる沈黙を破るように、些か鼻声の母の声が響いた。
振り向くと母と父があたしの荷物を持ち、笑って立っていた。
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