ひまわり
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◇◆Side.健◆◇
“汐莉、借りてきます”
そう言って僕と汐莉は電車に乗った。
本当は家でのんびりしようかと思ってたけど、今はただがむしゃらに僕は突き進んでいた。
何かに激しく衝き動かされるように、あてもなくひたすら電車に揺られていた。
「ねぇ健…どこ行くの?」
不安げな表情で僕に問う汐莉に微笑みを返して俯いた。
とにかく、何処か遠くへ行きたかった。
特に場所はどこでも良くて静かな場所に行きたかった。
適当な場所で降りて、適当な方向に歩きだす。
少し歩くと小さな街が見えてきた。
街、というよりは商店街といった雰囲気で引き寄せられるように僕らは足を踏み入れた。
それまで黙っていた汐莉が、あっと小さく声を上げた。
「ん?」
汐莉が指差す方を見やると、ささやかな雑貨屋さんがあった。
開け放たれた入口には大きなテディベアが座っていて、柔らかな空気が流れているのが肌で感じる。
汐莉が入ってもいい?とでも言いたげな顔で僕を見つめるから、僕は頷いた。
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