ひまわり
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◇◆Side.汐莉◆◇
ガチャ…
部屋で受験勉強をしていると、珍しく早く帰ってきたお母さんがドアを開けた。
「汐莉、受験まであと少しよ。
勉強ちゃんとしてるの?」
久しぶりに話したと思ったら
またこの話……。
「今やってるよ」
あたしはお母さんの前でだけいい子だった。
――あたしの体とか心より、
受験が大事なの?
そう。
お母さんはいつもそうだった。
あたしが悩んでいても無視して、勉強しろって言ってばかりいた。
あたしの成績がオール5から少しでも落ちたら、あたしは部屋からしばらくの間出してもらえなかった。
勉強勉強って、お母さんはそればかり。
でも勉強さえしていればあたしは自由。
「汐莉は朝日ヶ丘目指すのよね?」
「うん」
「汐莉なら受かるわよ」
――変な期待しないで。
あたしの心がお母さんに反抗する。
「勉強の続きしたいから向こう行ってて?」
あたしのことはお構いなしにお母さんは一人で話している。
一人になりたいのもあってお母さんに言った。
「勉強ちゃんとしなさいよ」
そう言い残してお母さんはあたしの部屋を去っていった。
「はあ………」
深い溜め息をついた。
シャーペンを持ち直した瞬間―…
ズキッ…
心臓に衝撃が走った。
「……はぁはぁ………痛いよ……」
その痛みは治まることを知らない。
ただ……ただ。
時間が経てば経つほど痛みは増していく。
誰か………助けて
お母さんは助けてくれない、
お祖母ちゃんはいない、
健の笑顔が浮かんだ。
お願い、健……
あたしの側にいて…
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