ひまわり
◇◆Side.健◆◇
「しお……あ、そうだった」
最近、汐莉はバンドの練習ばかりで放課後は一緒に帰ったりできない。
今日だって、やっと朝日ヶ丘festival★のつまんない3日目が終わったのに、一緒に帰れないなんて。
「……寂しすぎんだろーが。ばかやろう」
そう言ってため息を一つ。
バンドのことについては、全くをもって教えてくれないし。
寂しすぎるにも程がある。
ギュッ
カバンを持って、さっさと教室を後にしようとしたら突然腕を掴まれた。
驚く間もなく抱き着かれて、汐莉だと実感する。
「健…待って」
久しぶりに聞く汐莉の声に体が反応する。
動きが止まる。
心臓がいつも以上に暴れ出す。
途端に、視界いっぱいに汐莉が広がって離れた。
汐莉の頬がほんの少しピンクに染まっているのを見て、キスしたんだと改めて思った。
「…一緒に帰ろっ?」
当たり前、と呟き歩き出した。
汐莉にこの真っ赤な顔が見られないように、少しだけ先を歩いた。
心臓が自分のものじゃないみたいに暴れてる。
ダメだな、自分。
.