ひまわり



◇◆Side.健◆◇


「しお……あ、そうだった」

最近、汐莉はバンドの練習ばかりで放課後は一緒に帰ったりできない。

今日だって、やっと朝日ヶ丘festival★のつまんない3日目が終わったのに、一緒に帰れないなんて。



「……寂しすぎんだろーが。ばかやろう」



そう言ってため息を一つ。

バンドのことについては、全くをもって教えてくれないし。
寂しすぎるにも程がある。




ギュッ

カバンを持って、さっさと教室を後にしようとしたら突然腕を掴まれた。

驚く間もなく抱き着かれて、汐莉だと実感する。



「健…待って」


久しぶりに聞く汐莉の声に体が反応する。
動きが止まる。

心臓がいつも以上に暴れ出す。


途端に、視界いっぱいに汐莉が広がって離れた。

汐莉の頬がほんの少しピンクに染まっているのを見て、キスしたんだと改めて思った。




「…一緒に帰ろっ?」

当たり前、と呟き歩き出した。
汐莉にこの真っ赤な顔が見られないように、少しだけ先を歩いた。

心臓が自分のものじゃないみたいに暴れてる。


ダメだな、自分。















< 203 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop