ひまわり



『―嬉しかったら笑ってもいいよ
悲しかったら泣いてもいいよ

私が全部受け止めるから』




届いてほしい、届けなくちゃいけない

そんな思いがきっと…あたしたちを動かしてたんだ。


会場にいる一人一人の表情を忘れないように、あたしは前を見て歌いつづけた。




『―好きだよ、好きだよ……


ありがとう』








マイクをスタンドから取り外して、あたしは後奏が終わるのを待った。

綺麗に和音が響いて、やっとあたしは実感した。




「…本当に本当に、ありがとう」








3-Bバンドで良かった。
嫌でも引き受けて、やり切って良かった。


会場の誰もが涙を浮かべて、一心に拍手をくれる瞬間があたしは一番感動した。

届けたかった思いが伝わった気がした。






相変わらず、心臓は暴れたままだったけど。

もう構わずにあたしたちはステージから下りた。





全て出しきれたんだ。
もう十分、精一杯やれたから良かった。

健に……届いたかな。















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