ひまわり
「………健?」
広い部屋に、優しい声が響く。
思わず駆け出した。
行かなくちゃいけないって心が叫んでいた。
「汐莉……っ…!」
無我夢中で抱きしめた。
きっとこうしてないと怖かった。
汐莉がいなくなっちゃう気がして、ただ怖かった。
「健……どうしたの?」
僕の腕に埋もれて、曇る声。
汐莉だ。本物の汐莉だ。
間違いない、汐莉だ。
「泣いてるの…?」
汐莉の言葉に驚いて自分の頬に手を触れると、温かく濡れた。
汐莉は僕の手に握られたものに気づいて、静かに笑った。
そして大丈夫だと言った。
「あたしはもう何処にも行かないから。安心して?」
どれだけ僕は汐莉の一言一言に影響されるんだろう。
だけど、その分僕は汐莉なしじゃ生きていけなくなる。
もういっそのこと、それでいい。
汐莉と一緒にいられるなら、僕は何だってしたい。
だから……
「…ずっと傍にいてほしい」
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