ひまわり
目を開けると
辺り一面に菜の花が広がっていた。
少し行ったところに川に橋が掛かっている。
「ここ…どこ?」
周りを見ても誰もいない。
綺麗な菜の花が色褪せて見えた。
「…あなたって……汐莉さん?」
ふいに名前を呼ばれ、驚いて顔をあげる。
橋の前には真っ白なワンピースを着た、美人な女の人が立っていた。
いつの間にか、こんなに橋の近くまで来ていた。
「どうして名前を……?」
「…会いたかった」
女の人はそう言うとあたしを抱き締めた。
「あの……名前は…?」
「私…?私は……」
あたしが訊ねると少し困った顔で
何かしらね?と言った。
そして、にっこり微笑むとあたしの頬を両手で挟んだ。
女の人の手はとても冷たかった。
「祥介によく似てるわ…」
祥介はあたしの父の名前。
見ず知らずの女性がなぜ父の名前を知っているのか不思議に思ったあたしはこう訊ねた。
「祥介って…お父さんを知ってるの?」
すると、女の人がとても悲しげな瞳をして、ええ、と呟いた。
「あなたは…今、幸せ?」
女の人が優しく訊ねた。
「幸せ……です」
家族のことを除けば、あたしは幸せだと思う。
「そう…
でも淋しそうな瞳をしてるわよ?」
女の人はあたしにそう言って何かを取り出した。
「そう…ですか?」
「ええ、なんとなくわかるのよね…
…手出して?」
女の人は微妙な笑顔を浮かべてあたしの手に何かを乗せた。
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