ひまわり
◇◆Side.汐莉◆◇
「はい、少し冷たいですよ」
医師が言ったすぐ後で
肋骨のあたりに少し冷たい感触がした。
ぎゅっと目を固く瞑る。
今、何が起こっているのかを
見たくなかったから。
見たら、あたしの運命が
分かってしまうような気がして……
瞼の裏側にたくさんの健がいる。
笑った顔の健
怒った顔の健
困った顔の健
泣いた顔の健
眠った顔の健
一つ一つが鮮明で、
すぐそこに健がいるような気がした
健の顔を見ていたら
なんだか眠くなってきて
あたしはいつの間にか
浅い眠りについていた。
―――――………
目の前に広がるのは
たくさんの菜の花の野原。
「……まただ…」
あたしはあの日からこの夢ばかり
見るようになっていた。
「汐莉?」
「…あっ」
真っ白のワンピースの女の人が
あたしの名前を呼ぶ。
今ごろ、ふと思ってしまった。
…―なんで真っ白のワンピースなの?
ワンピースならもっと
可愛い柄とかあるのに……
「汐莉…?どうしたの?」
女の人の声にはどこか、
あたたかみがあって優しかった。
あたしはこの声を聞く度に
自問自答してしまう。
だから、疑問があっても結局聞けずに
心の中で潰してしまう。
でも今日は違う。
ちゃんと聞くんだ。
疑問を解決するんだ。
そう心に決めて、重い口を開いた。
「…どうして真っ白なの?」
.