ひまわり


…………―――――



「神崎さん、終わりましたよ?」



目を開けると、医師の顔が
視界に飛び込んできた。




「……あ、はい」


反射的にそう返事をした。




「検査結果は明日出ますんで」

はい、と適当に返事をして
自分の病室に向かった。





歩いている途中、窓から空を見上げた。


…―夢の中の空もキレイだったな




ふと、女の人の顔を思い出す。

くっきりと鮮明に、とは
言えないけれど少し思い出せた。





「今を生きる、かぁ…」



あの人が最後に言った言葉を
繰り返して唱えてみる。

いつも夢から覚める直前に聞こえる声。



それは間違いなくあの女の人の声で、
それは間違いなく“今を生きて”という言葉。






空を見上げたら答えが
見つかるような気がした


窓から見える空は
真っ青で夏雲が流れてて
太陽が見え隠れする。




あの女の人の寂しげな笑顔が
この空のようにも見えて切なくなる。





「空……」


空…
あなたは何を見ているの?



何を想い、

何を考え、

何を願うの?



空は答えることなく、
ゆっくりと流れる。



この空は遥か遠くを目指して
ゆくのだろう……







.



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