ひまわり
「汐莉さんの病気は……」
さっきの雰囲気とは打って変わって
重苦しく暗い雰囲気が漂う診察室。
医師も看護師さんもみんな
暗い表情をしながら
あたしのカルテとにらめっこ
診察室には、
お父さんとお母さんも来ていて
普段とはまるで人が違うみたいに静か
―あたしの病気、そんなに悪いんですか?
心の中でわき上がる疑問。
それを口にできるほど、
あたしは強くない。
医師は尚も黙りこくって
カルテをじっと見つめたままで
何も言わない。
やっと深刻そうな顔をして、
医師は重そうに口を開いた。
「…汐莉さんは………」
ゴクン…
生唾を飲む音が聞こえた。
「…拡張型心筋症です」
拡張型心筋症……?
難しそうな病名が頭の中を
ぐるぐる駆け巡る。
あたしには質問する元気もなくて
ただ座ったまま動けなくなった。
「…難病の一つで日本ではまだ、完治した例は……
ありません…」
この人は何を言ってるんだろう?
あたしが病気…しかも難病なわけ
ないじゃない…?
「……治すにはアメリカでの心臓移植しか方法はありません
……もってあと、5年の命です」
隣で啜り泣く声が聞こえた。
いつもなら涙が出るはずなのに
今は何も流れない。
心が空っぽになっていくのを感じた
「…一緒に頑張りましょう?」
何を頑張れって?
治る可能性がないのに?
気付けばあたしは診察室を飛び出していた
ただ走って走って…
力尽きるまで走った。
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