ひまわり
顔を上げたら、芝生の上で寝転ぶ
人影があった。
見慣れた姿…
やっぱり…
「汐莉……?」
汐莉はゆっくり起き上がると
涙を流した。
後ろ姿しか見えないけれど
時折、小刻みに震える。
泣かないで…?
僕は最後の気力を振り絞って走った。
「汐莉っ!!」
名前を呼んで、後ろから抱き締めた
「心配かけんなよ……」
汐莉は静かに涙を流した。
壊れそうな細く小さな体を
優しく…強く抱き締める。
汐莉が愛しくて……
汐莉が恋しくて……
「健………?」
小さな声が僕の名前を呼ぶ。
汐莉が黒目がちの大きな瞳で
僕を見つめた。
その瞳からは
透明に澄んだ涙が流れていた…
軽く上目遣いになる汐莉。
そして、歯止めが利かなくなった体は
そっと汐莉にキスしていた……
甘く優しく長いキス……
汐莉の中に“俺のもの”という
証を残すように…
静かに体を離す。
ふいに目に入った、汐莉の色白の腕
そこには小さく無数の傷があって
赤い血が滲んでいた。
爪で引っ掻いたような傷が痛々しくて
「バカ………」
と、軽く汐莉を叱った。
「ごめんね……?」
汐莉は瞳に涙を溜めて言った。
それから僕は、
汐莉にもう一度キスをした。
「もう離さねえから」
汐莉から静かに体を離して
こう告げた。
本当にもう離してやらない。
汐莉は僕だけのものだから……。
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