ひまわり



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「ねぇ、汐莉?」

体育館での練習中、里実があたしを呼ぶ。


ん?と言うと里実は複雑そうに話した。





「あの子、汐莉に似てない?」

「えー、どれどれ?」






里実の指差す方に目をやると、
井上先輩と話す女の子がいた。




よく見てみると

…………絢佳だった。






「………絢佳」

「ん?汐莉の知り合い?」

「うん、幼なじみ」


へえ~、と里実は感嘆符を漏らして
先輩マネージャーとバスケをし始めた。

あたしもそれに混じってバスケをする。



1on1―――









「汐莉、ナイッシュー!」


気付いた時には、
あたしの打ったシュートが決まっていた。


かすかに揺れるネット――…

あたしはこの瞬間が好きだった。






ふと、絢佳がいた場所に視線をずらすと
もうそこに絢佳はいなかった。


横目に健を見た瞬間……





時空が全て止まったような気がした





音も聞こえない

体も動かない

まばたきもできない



そんな状態のあたしが見たものは、


健が絢佳を抱き締めた瞬間だった。







他の人にとっては
とても短い間だったのかもしれないが、

あたしにとっては
何分も

何時間も

何日も

何週間も

何ヵ月も

何年も……


たってしまったかのように思えた。








あたし…………

信じたいよ?




あの映像は、あたしの脳が勝手に作り出した
イメージの世界なんだと……。



あたしの一番大切な人は
あの人にとってあたしも一番大切なのだと……。







信じてもいいですか…?








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