フミキリ.
俺は今日も、フミキリであいつを待った。季節は春になった。
桜の花が満開で、景色は桜の淡いピンクが目立つ。
俺が幽霊になってこのフミキリであいつと初めて会った時、あいつは目を大きく見開いたまま固まっていた。
まぁ無理ないだろ、死んだはずの俺がいたんだから。俺が逆の立場でもそうなるだろうと思う。
何日かたった今では、前みたいに憎まれ口をたたくようになったけど。
あーあ....本当は、俺も春から中学に通いたかった。
まだやりたい事が沢山あったんだ。
でも、だからと言って男の子を助けた事に後悔も何もしてないし、だからってまだこのフミキリに居座ってるワケじゃない。
俺は大切な事を伝えに来た。
生きている時にはなかなか伝えられなかった事。
自分の中で先送りにしていた事を。
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