フミキリ.
カサッ....
さっきまで閉まっていたフミキリが開いたと思うと、花束を持った母さんが向こうから歩いて来た。
(また....)
母さんは俺が死んでから、いつもこうして朝早くに花を供えに来る。
近くで見ないと分からないけど、目に今にも零れ落ちそうな程涙をためながら。
俺は.....母さんの泣いている姿をみたくない。いつも心が締め付けられて、幽霊になっても俺の中に残る形無きモノに苦しめられる。
いつも何も出来ない自分が嫌になる。
母さんや親父より先に死んでしまった自分が嫌になる。
「こんなバカ息子でごめんな....」
一番届いてほしいその言葉は、一番伝えたい人にも、誰にも聞こえずに消えた。
母さん、昨日、あいつにも言ったんだけどさ.....。また言わせてくれよ。
もう届く事は無いけれど。
母さん、本当は.......
俺、もっと.....もっと.....


「生きたかったんだ」


死んでから分かった。
生きてるって、本当は全然当たり前じゃないって。
気づいた時にはもう遅かったんだけど。今更気づいた所でまたどうしょうもないんだけど。
もし俺が今もまだ生きていたなら、きっと母さんや親父は幸せだった。
....みんな笑っていられたはずなんだ。
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