ハリケーン
「よしっ！水撒きでもするか！」

千尋は『SurfShop・波乗り屋』の表に回ると、扉の横の表札を『Close』から『Open』へとひっくり返した。

脇にある蛇口をひねるとリールに巻かれたホースの先から勢いよく水が飛び出して千尋の白いＴシャツを濡らす。

「やだもー！またやっちまったよ！」

千尋は一人ブツブツと呟きながら、それでも気持ち良さそうに店の前に水を撒いていった。

ずぶ濡れになったＴシャツの下からは淡いブルーのブラが透けて見えているが、全く気にしてはいないようだ。







「……あのぅ…」

そんな千尋の背後から話し掛ける少年がいたが、千尋は気付かずに水撒きを続けた。



「……あの！」

その声にビクッとしながらも振り返る千尋。

「あの、お店開いてます？」

少年は千尋から目を外し言った。
大きく張り出した千尋の胸を直視出来ない、と言ったところだろう。



（げ！朝のヘタクソ君だ…）

千尋はその少年の頭の先からつま先までを舐めるように見た後、

「いらっしゃい！開いてるよ。そこ『Open』って書いてあるでしょ？」

見えない？とでも言いたげに千尋は返事を返した。








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表紙・目次

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